たくあんを考案したとされる沢庵和尚についての諸説。
沢庵は、大根を糠床(ぬかどこ)で漬けた漬物で、その起源は諸説ありますが、江戸時代の初期に白米を食べるようになったことから、その副産物として生まれる糠を用いることで広く普及するようになったと言われています。
たくあんの発祥は諸説ありますが、室町~江戸時代(1573~1634)に沢庵禅師が考案したものと伝えられています。
沢庵和尚は、江戸幕府の三代将軍である徳川家光の命により、現在の東京都品川区に東海寺を開山します。
ある日、徳川家光が東海寺の沢庵和尚のもとを訪れた際に、「和尚、余は近頃何を食べても、味がなくて困る。なにか口に合うものがあれば食べさせてくれ。」と求められました。
「それはおやすい御用でございます。明日午前10時ごろ、拙僧のところへおいでください。もっとも当日は、私が主人で殿は客、わがままを言われても困ります。それだけはご承知ください。また、どんな用があってもご中座されません様お願い申し上げます。」と答えました。
家光は喜んで帰っていき、翌日家光は沢庵のところへやってきました。
沢庵は家光を茶室に案内し、「しばらくお待ちを。」と引き下がってしまいます。
ところが待てど暮らせど一向に和尚は出てきません
朝の10時から待たせておいて、昼になっても現れず、3時になっても現れません。
家光が腹が減って目が回りそうになった頃、
和尚が出てきて、「遅刻致し恐れ入ります。沢庵手製の料理、何卒ご賞味ください。」 と、御膳を差し出しました。
お膳を見ると、黄色いものが二切れ皿に乗り、椀が添えてあるばかり、他には何もありません。
椀の蓋をとってみましたが、中には飯が入っており、湯がさしてありました。それでも家光は腹が減ってたまらない。
「和尚、馳走になるぞ。」と大急ぎで椀を抱え込み、カツカツと食べ出しました。
「おかわり。」
家光はようやく腹が一杯になったとみえて、やっと箸を置きました。
「時に、和尚。この黄色いものは一体何であるか。」と問うと、
「それは大根の糠づけでございます。」と沢庵は答えました。
「ほほう。」と、家光がすっかり感心してしまった時、沢庵はおもむろに姿勢を正してこう言いました。
「上様は征夷大将軍という御位、人間の富貴この上なく、されば結構なるものを毎日お膳に供えて、それに口がなれて旨味がございませぬ。
つまり口が贅沢になっているからでございます。故に今日、空腹待ち、かような粗食を差し上げたのでございます。」
上様は怒りもなく、「美味じゃ。」と言われたとのこと。
「以後、空腹になるのを待ってお食事されるとよろしゅうございます。」
とそれとなく将軍を戒めました。
後日、家光は沢庵を招き、特に呼び名が決まっていなかったその大根漬けを、貯え漬けならぬ「たくあん漬け」として一般にもこれを貯えさせました。
禅宗には、中国から製造法が渡来したと思われる大根などの貯え漬けがあり、これは、塩を主体にした、ただ塩辛いだけの漬物でありました。この漬物に米ぬか、甘柿の実などを入れて甘味をつけるなど改良したのは沢庵禅師であると伝えられています。
ちなみに、たくあんの由来としては、沢庵和尚の墓石が大根を漬ける漬物石の形に似ていたからという説もあります。
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