


1年で穫れるらっきょうを、あえて3年待つ。福井・三里浜「三年子花らっきょ」のつくり手たち。
らっきょうは、1年で収穫できる作物です。秋に植えて、翌年の初夏に掘る。
鳥取も、九州も、全国どこでもだいたいそうです。
でも、ここだけは違います。福井県坂井市の三里浜砂丘地。

植えてから収穫するまで、足かけ3年。
全国でここだけという栽培法が、明治の初めから今も続いています。
そのらっきょうを守っているのが、三里浜特産農業協同組合さん。

鳥取のらっきょうに慣れ親しんだ身としては、福井のらっきょうづくりに興味津々です。
今回は、代表理事組合長の村上 伝左エ門さんと、販売課課長の小林賢悟さんに話をお聞きしました。

左:代表理事組合長 村上 伝左エ門さん 右:販売課課長 小林賢悟さん
なぜ、「花」らっきょうと呼ぶのか。

岸田
さっそくではありますが、まずは名前について教えてください。「花らっきょ」という名前には、どんな由来があるんですか?

小林
ご存知かと思うんですが、らっきょうは10月の下旬から11月の頭にかけて花が咲くんです。
それが1年目より2年目の方がずっと花が多くて。そこから「花らっきょ」と名づけました。本当は紫色の花なんですよ。
もう一説あって、根と葉の両端を切るから「端(はな)らっきょう」という説もあるんですが。

村上
どっちも出鱈目じゃないので、爽やかに伝えたいなら花、泥臭く言うなら端と、場所によって使い分けてもらえれば(笑)。
昔ここらで100町歩あった時には、隣の畑も含めて一帯が紫になって。北海道のラベンダー畑くらい綺麗だったんですよ。
岸田
それは壮観な景色だったんでしょうね。
そもそも、なぜ福井だけ3年かけて栽培するようになったんですか?

村上
根本的な文献が残っていないんですが、元々は食べるためではなかったようです。砂丘の砂が風で飛ばないように、防砂のために植えたのが最初で。それが明治初期のことです。

岸田
食べるためじゃなかった、というのは意外でした。鳥取も砂丘の防砂に松が植えてありますが、それが福井ではらっきょうだったんですね。
村上
はい。それが、だんだん食べられると分かってきて、塩漬けにしたりしながら。そして長く置いた方が小粒で食べやすいとなって、いつの間にか3年掘りが主流になってきた。

小林
昭和の初めからは塩漬けで関西・中京方面に出荷するようになって、それが今の流通の基盤になっています。
だから今でも関西では小粒のらっきょうが好まれるんです。ときどき大きいのが混じっていると「粒が大きい。もっとちっちゃいのがないの?」と電話がかかってくることもあります(笑)。
3年待つ、ということ。

岸田
改めてお聞きしたいのですが、3年待つと、らっきょうはどう変わるんですか?
小林
分球を繰り返すんです。1年掘りだと1株に15〜20粒くらいですが、3年掘りだと50粒ほどになります。繊維が細かくなって、身がキュッと締まる。
歯切れが良くて、小粒で食べやすいのが、三年子花らっきょ一番の特徴です。
岸田
1年で取りたいところを、あえて待つ。
……これ、言うのは簡単ですが、農家さんとしては大変ですよね。収穫が1年遅れると言うのは。

小林
その通りです。草取りも大変なんです。秋草と春草、2回分を管理しないといけない。肥料も砂地だと流れやすいので、1回にドカーンとやるんじゃなくて、量を少なくして回数を重ねます。

綺麗な畑をつくるにも大変な苦労があります
村上
そういった苦労もあって、若い人にはなかなか関心を持ってもらいにくい作物なんです。
大根やカブなら2〜3ヶ月の管理でどうにかなるから、そっちへ行ってしまいます。3年間草を取り続けないといけないから、手間がかかって、だから高級品になるんです。

岸田
福井では、花らっきょうが贈答品としても人気とお聞きしました。道の駅にも、箱に入ってきれいに包装された贈答用のらっきょうが並んでいてい、鳥取ではどちらかといえば土産品が多いので、とても新鮮な光景でした。
そういう(らっきょうを贈る)文化があまりないので驚きましたが、手間や時間を考えると納得です。
らっきょうがなくなった、2023年。
岸田
業界の人なら忘れられない出来事として、2023年にらっきょう出荷を止められたことをよく覚えています。この決断はすごいことだと思いました。

村上
決断じゃなくて、なくなったんです。在庫がゼロになった。
お歳暮の時期に「らっきょうがないってどうなってるんや」と怒られましたが、物がないのでどうしようもない。県外の売り場でも棚がなくなって。今、一度なくなったその棚を取り戻すのにてんやわんやです。
岸田
なぜ急に在庫が尽きたんですか?
村上
生産者の高齢化です。作付け面積がどんどん減って、「じゃあ僕もやめよう」と連鎖反応して、1年で10町歩減ったりした。遊休地から砂が飛んできてらっきょう畑が埋まるという弊害も出てきて、悪条件が重なりました。
若い人で70歳、高齢者だと85歳を超えた人が多い。いわゆる切り子さん、根と茎を切る担い手も、昔は150〜160人いたのが今は15人ほど。10分の1です。

岸田
らっきょう農家さんの高齢化という点では、鳥取も同じ課題を抱えているのでよく分かります。
村上
物がなくて売れないというのが、特産農協として一番のダメージです。昔は手植え手掘りで体が辛かったかもしれないけど、組合としての本当の危機は農家不足の今なんです。
岸田
その状況に対して、今どんな手を打たれたのですか?

村上
大きく2つあります。ひとつは機械化を進めて、少ない人手でも作付けできるようにすること。今は収穫や植え付けの7〜8割は機械化できています。
もうひとつは、組合で直接農地を管理すること。全体14町歩のうち6町歩を組合で管理していて、個人の生産者だけに頼るのではなく、組合自体が作り手になる。ただそれには経費がかかる。本当に重圧を感じながらやっています
岸田
え!?!?植え付けが機械化なんですか!知りませんでした!!
村上
鳥取は植え付けは手でしているでしょう?福井では数年前から機械化できてるんですよ。
岸田
それは衝撃です。
そして、組合の職員さん自身が畑に出て作るというケースもあるんですか?
村上
小林さんも農協の職員をしながら、休みの日や朝晩に自分の畑でらっきょうを作っているんです。ひとりで自分の畑を管理して、全量を農協に出荷している。本当に感心します。
我々みたいに年齢を重ねた者と、体力のある若い世代が一緒に進めていくことに、大きな意味があります。

小林
やっぱり、2023年の欠品で「自分たちが売りたいらっきょうがない」というのが一番辛かった。それなら自分でつくろうと。
作ってみると、らっきょうに詳しくなります。農家さんと話す時の説得力も違う。定年した60代の人が「自分の畑を草林にするわけにもいかないし、機械で楽にできるなら俺もやろうか」と思ってくれたらいいなと。
先輩と数人の職員で共同管理する試みも去年から始めました。我々のグループが1つのモデルになればいいなと思っています。
手に取ってもらうための、新しい一手。
岸田
そういえば、新しいパッケージ商品を開発されたと伺いました。以前からずいぶん変わりましたよね。

小林
去年から商品開発して、お土産売り場や東京の百貨店などで若い人に手に取ってもらえるよう、スタンドパックをつくりました。東京の1人暮らしの方を意識して、小分けでチャック付きに。
ダントツでレモンが売れています。あとはワイン漬けと塩の浅漬けタイプ。輪切りにしたレモンを入れているので、見た目も可愛いです。
岸田
チャック付きの製品作りは難しいですよね。そのチャレンジに感動しました。
本当に美味しそうな見た目のパッケージで、手に取りたくなりますね。

村上
若い人にらっきょうの価値を知ってもらうには、まず手に取ってもらわないといけない。魅力的な商品ができることで、らっきょうへの関心が高まって、新規で作り手になってくれる人のモチベーションにもなる。
まず第一は作付け面積を増やすこと、それと商品のPRは同時並行でやっていかないといけない。
岸田
どちらも、待っているだけでは進まない話ですね。

村上
そうなんです。振り向いてくれるのを待つんじゃなくて、振り向かせるように仕向けていかないといけない。
口で言うのは簡単ですが、実行するのは本当に大変です。今は減少を食い止める方法を模索している段階で、まだ道半ばです。
岸田
鳥取でも他人事ではないお話しでした。私たちも頑張っていきます。
今日は本当にありがとうございました。次は花の咲く季節にも、ぜひ伺わせてください。
村上
こちらこそ、ありがとうございました。

取材を終えて

当時、福井三里浜のらっきょうがストップしたというのは本当に衝撃的な出来事でした。関西のお客様は小粒でないとダメと言われる方も多く、業界にとっては三大産地の1つが止まるなんて、、、とショックでした。
しかし、本当に驚いたのはそこから立て直されたこと。どんな風にして、だれが先導切ってやってるんだろう、、、そんな疑問を持った時に、村上組合長がすごい!!という噂は聞いていたのですが、今回のご縁をいただきご本人にお会いすることができました。
何よりも産地の復活。出荷をし続けるために農協の1人1人の職員さんの熱意を感じました。本当に素敵なリーダーと、チームだなと。
産地は違えど、一緒に盛り上げていきましょう!
最後にかけていただいた言葉がとても心に沁みました。


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